「初めてのモデルさんはお母さんみたい。」
真冬の名古屋駅でわざわざ出迎えてくれたのは、
白のダウンジャケットをさらりと着こなし、
とても、ほぼ同じ年とは思えない素敵な大人の魅力をお持ちの、
「すず」さんこと鈴木円さんである。
すでに、作品はWebやメールを介して拝見させていただいてはおり、
作品の力強さと、その中に具間見える
女性ならではの芯の強さに非常に魅かれていた私は
それがこんなに素敵で、おしゃれな方と知って、
感激のあまり、すでに舞い上がり状態!
「初めて描いたモデルさんは、とにかく怖かったんです。」
同年代の気安さから、いきなりから揚げ(味噌風味)にビール片手
というなごやかな(?)空気の中、
取材というよりも「女性同士のおしゃべり」のような勢いで始まった。 |
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すずさんが初めて「美術モデル」と出会ったのは学生時代。
予備校・大学時代の頃である。
「裸の人がいるという状況にも不慣れでしたけど、
室温についてとかいろいろ怒られちゃいました。
まるでお母さんみたいに(笑)
そこで、モデルさんには気を使わなきゃいけなんだという事を教えられました。
大事な事ですよね。」
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「水も滴るモデルさん」
「いきなり、持参したバケツから水かぶっちゃうんですよ。
で、水の滴る状態で描いて下さいって、、。
もうびっくりしちゃいました!(笑)」
印象的なモデルさんについては、おもしろいエピソードがたくさん。
聞くところに寄ると「水も滴る」そのモデルさんは、
会場が水浸しにならないように、ビニールシートもきちんと用意していたのだ!
その他、小物を使うモデルさん、「薔薇」を口にくわえるモデルさん、、、。
名古屋のモデルさんは激しいのか、、?
すずさん曰く、「自分の世界を持っているモデルさん」は
良いとか悪い以前に感心しまうそうだ。
(実は、この後この「びっくりモデル」さんの一人とお会いしてしまった。)
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すずさんの画材は、私の姉が使っていたものを思い出させた。
子供の頃は絵の上手な姉のお下がりを貰えば、
自分もうまく描けるような気がしていたのだ。 |
「背中が好き。」
「女性のモデルさんは、、やっぱりふっくらした人がいいですね。
でも、それはあくまでも好みであって、
作品によっては、やせたモデルさんが欲しい時もあります。
この作品なら太った人、これなら痩せた人という風に。」
そのなかでもモデルさんを描くときには「背中」に目が行ってしまう。
はっきりと「背中が好き!」である。
すずさんの場合は、クロッキーが完成品ではない。
デッサンをとった後に、ゆっくり時間をかけて、日本画、版画に作り上げていく。
その過程で、固体の識別もわからなくなるくらい「ぐちゃぐちゃ」にしてしまうこともある。
クロッキーやデッサンの段階では、「モデル」を描き、
その後、作品の進行の中で自分を織り交ぜていく。
取材で見せていただいた画材は、鉛筆とパステルだが
「日本画」は学生時代から一貫して続けている手法。
初個展では「版画」を展示する予定だが、
個展のタイトルを「版画展」ではなく「鈴木 円 個展」としたのは、
「版画家」として固定されるのではなく、
日本画をベースにいろんな事を試してみたいという意思表示でもある。
そして、同時に作家「鈴木 円」という一個人のスタイルを確立すべき努力をしている。
個人のスタイルというのは、自分から搾り出すしか方法は無い。
「日本画」でも「版画」でも、「鈴木 円」と対峙できる作品は、
この時代もしかしたら、女性にとってどんな巨匠の作品よりも身近なものになるかもしれない。
現代の女性は、自分たちが望んだけれど、一方で依存したくとも出来ない社会にストレスを抱えている。
美術モデルもその波にのみ込まれる。
同年代の方の作品を観る事で、静かに自分を見直す時間を持つことは価値がある。
「一緒に成長していきたい作品」
これが、すずさんの作品を見たときの率直な私の感想である。
「まだ、定まっていなんです。」
すずさんの運営するホームページ、「すずのらくがき帳」では
主に人体の作品、しかもクロッキー・デッサンを多く出されているので、
人体制作がメインと思いきや、実はそういうわけではない。
「あれは、、モデルさんを探す為に開設したページなので、、
自分の中では、人体以外も描きますし、、
何が自分のテーマなのかと聞かれると、実はまだ定まってないんです。」
作家さんが自分の作品を掲載したホームページは数多くあるが、
中には「観て貰うことを主張して」作品群を掲載している方もおられる。
そのあたり、「すずのらくがき帳」はちょっと違ったようである。
取材を通してなんとなく判ってきたが、
すずさんは、実はちょっと恥ずかしがり屋さんである。
激しく芸術を語る方でもないし、何かを必死に主張するタイプでもない。
そんな方が自分でホームページを開設して、モデルの募集まで行うというのは、
おそらく勇気のいることなのではないかと思われるが、
恥ずかしがり屋さんの中でも、ひとつだけ「作品をつくる」という事に関しては、
すずさんの中の、強い気持ちが押し出されてくる。
奥ゆかしい方だー。
美術制作をするにあたって、人体にするか、静物、風景にするか決めなければいけないわけではない。
女性というのは、花であり空気であり、自然の一部である。
女性であるすずさんが「自分の思いや感情を」作品に反映させるのに
定まらないのは必然であるような気がした。
そして、それは今後描いてみたいモデルさんについての質問にも表れている。
「もっとね、ご年配の女性を描きたいんです。
お子さん連れでもいいし、お着物を着た女性ももちろん。
肉体の表現も素敵だけれど、大人ならではの雰囲気とか。
そういうモデルさん、応募してきて欲しいな。」
すずさんは、「ご贈答用」の新鮮できれいな花ばかりを描きたい方ではないのだ。
そういった花や物を読み解くには、
自分と一番身近な人体からのメッセージを必要としている。
「人体、特に女性は自分自身の感情や思いを投影させやすいから」とおっしゃるすずさん。
等身大のすずさんを素直に表現するには
同年代、そしてこれからはそれ以上の年齢のモデルさんが必要なのである。
「これ、私です。」
モチーフになったモデルさんを描いているし、
花や静物も描いているが、描かれているのはすずさんの素直な「気持ちと感情」である。
すこし、不器用と思われる方もおられるかもしれないが、
無理をしない、素直な表現を欲している制作に対する姿勢は、
人柄も含めて、これからも刻々と変わっていく自然体のすずさんを
「見届けたい」という気持ちにさせてくれた。
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「一生描き続けていくことが目標。」
いろんな迷いはあるけれど、自分の「感情」を一番反映させられる対象として
「女性」はこれからも描いて行く。 初めての個展のテーマも「花と女性」。
「とにかく、一生描き続けていくことが目標。」
この先、できることなら年一回のペースで個展は開きたい。
もちろん、それが簡単では無いことも判っている。
けれども、この言葉を発した時のすずさんからは、
「覚悟を決めた」人特有の爽快感さえ伝わってきた。
最後に、今後のテーマとして「妊婦さん」も描きたいし
ArtModel.Infoの「母子像プロジェクト」にも
参加して描いてみたいとおっしゃってくださった。
すずさんの活動を応援したい私としては、
今後のこういった企画に対する要望の大きさに責任を感じると同時に、
こういった作家さんがおられる限り、地方での開催も実現したいと思った。
そして、女性であること、女性を表現することをしなやかな感性でがんばり続けてくれるすずさんに、
同年代の女性としても、一人の美術モデルとしても元気をいっぱい貰った。
この記事を執筆しながら、美術モデルにとって
「この人の為ならがんばってポーズをとりたい」
と思わせてくれる作家さんに出会えることは、
美術モデルの職業的喜びであり、
人間としての成長の大きな要因の一つにもなるということ、
そして、それをたくさんの美術モデルさんに実感して貰う為に、
「出会い」と「コミュニケーション」の大事さを伝えて行ければ、と願わずにいられなかった。

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取材を終えて。
すずさんは一人の女性としても、とても素敵な方である。
私にとって素敵というのは、
「気負いも無いけれど、がんばっている。」
「強いことは言わないけれど、主張はある。」
「梅干は嫌いだけれど、お弁当のご飯についた赤い部分くらいは食べる。」
という、ようするに「迷えるただの人間」である。
人間も物も気持ちも、時間と共に変化して、そして私も変化していく。
なにも定まらないけれど「えい!」と、時々自分を押してみる。
すずさんにとって、その「えい!」は重たい銅版画プレス機を買っちゃったり、
ホームページを開設したり、個展を開いたり。
たおやかな女性らしさもあるけれど、がんばっちゃう。
彼女は自分の存在も気持ちも、自分なりにやわらかく受け止めて、
あるものすべてを否定したり、ひどい無理もしない。
ご本人は気がついているのかいないのか、、、でもそれはものすごい能力である。
「モデルさんはとにかく個性を大事にして欲しいな。
いろんなモデルさんがいていいと思う。
そしてその個性を表現をする気持ちを持って欲しい。
表現しようとする気持ちは必ずポーズに表れてくるから。」
ほらね。モデルさんに対しても重たくない。
「自然には逆らわないけど、自分も大事。」
すずさんの持つ空気とスタンスは見ていると、とても安らぐのです。
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そんなすずさんが、ご自分の「思いと表現」を表に出すのはいよいよこれから!
3月21日から名古屋で初の個展が開催されます。
取材中にも、その後のメールのやり取りでも、
「初個展」に対するプレッシャーや苦悶がありありと伝わってきた。
モデルという立場もあるけれど、「すずさんの思いを混じり気のないそのままで出して欲しい」
という気持ちもあるので、私の発言による迷いや影響を生じさせてはいけないと思い、
その後のやりとりは個展が終わるまでは、最低限のお話しかしないようしている。
すずさん!個展が終わったら、又一杯と楽しいおしゃべりしましょう! |
| 2005年2月28日 記事執筆NATU |
鈴木 円 個展情報
無事、終了しました。
個展の様子は「すずのらくがき帳」にてご覧いただけます。
こちらからどうぞ!
2005年3月21日(祝)〜3月27日(日)
AM11:00〜PM6:00(最終日はPM5:00で終了)
会場
ギャラリー安里SIX
名古屋市千種区未盛通り1-18 覚王ハイツ1F
TEL (052)762-5800
アクセス
(名古屋 地下鉄東山線覚王山駅 2番出口すぐ)
地図はこちらをクリック

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